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第1章 幸せを運ぶ先祖供養

核家族によって先祖とのつながりが断ち切られる
 最近、親がわが子の命を奪ったり、子供が親を殺すといった悲惨な事件がとみに増えてきました。社会学者や心理学者たちは、こうした現象を核家族(かくかぞく)化の進行による現代人の心の変化によるものだと説明しています。つまり核家族化によって家族の絆というものが希薄となり、加えて社会構造が極めて流動的になってきたために、人間同士の心のつながりが保てなくなったというのです。
 しかし、この説明はあまりにも一面的な見方で、正確なものではありません。核家族化が進むことによって、父母や兄弟との心のつながりが薄くなったということも事実ですが、実は一番大きな変化が表れたのは、祖父母より以前のご先祖様とのつながりが断ち切られたことです。
 核家族化によって、家を継ぐといった考え方は古い時代のものとされるようになり、本家や分家などという相続の考え方も時代遅れとさえ言われるようになりました。
 さらに社会構造の流動化によって、若者たちは家を離れて大都市に集中し、一方、大資本は地方都市に進出して在来の小さな会社や商店を駆逐し、町や村の様相を一変させています。何十年、何百年同じ土地に住み続けるということが難しくなっているというのが現在の社会です。
 こうした社会構造の流動化が核家族化の進行とドッキングすることによって、人々は家というものを自分中心に考えるようになり、先祖を守り、つながりを保つという先祖供養の意識が薄らいでいったのです。
 たとえば、夫婦が子供を連れて、田舎に父母を残したまま上京して、もっと稼ぎのある職につこうとします。この夫婦一家は核家族ということになります。先祖代々のお墓は残された父母に任されることになります。しかし、田舎の父母が亡くなると、このご先祖様たちの墓守りをするものがいなくなります。
 それでも夫婦が健在のうちは、自分の親の命日には田舎に帰って供養をするでしょう。しかし、年に何度も帰れないまま、お墓は荒れ果ててしまいます。
 やがて夫婦が亡くなり、孫の代になると、遠い田舎にあり、しかも普段交流のなかった祖父母の墓を守ろうという気持ちは起きてきません。お墓は荒れ放題となり、そのうち墓の場所さえわからなくなってしまうでしょう。
 近年、このように放置されたまま「無縁墓」になるものが全国的に増えているのです。


続く

核家族
核家族とは社会における家族形態。夫婦のみか夫婦と未婚の子供、父親か母親と未婚の子供の家族をさす。 現在の日本の家族形態はこの「核家族」が中心となっている。